走姿顕心 vol.49

箱根駅伝ふり返り〜続

監督総評

前編に続き、レースの勝因とも言える4区と5区の走りと結果までの背景について記載してみました。

第4区:嶋津雄大(東京 若葉総合)

私(榎木和貴)も3年、4年と2回連続でこの区間を走った経験があるが、起伏にとんだコースで終盤に上りが控える非常に難しいコースである。

34秒差の2位でタスキを受け取った嶋津はスタート直後からスイッチが入っていました

前回96回大会の10区で区間新記録をマークし11位から9位へ順位を押し上げ、シード権獲得に大きく貢献しましたが、当時本人は初めから攻めモードに入っており、直前の指示を守るどころか最後まで攻め続け、上記の結果を残しました。今回も直前の様子が同じ空気感だったので本人の感性に任せることにしまた。

レースは6km付近で34秒差を詰め、トップの東海大に追いつくとそのまま突き離しにかかるタフなレース展開。中継手前1km付近では何度も足が攣りかけている様子が伺え、監督車の中では”途中リタイヤ”も一瞬考えるほどでした。

ビハインド

今年の嶋津は春先に諸処の事情により「休学」と言うビハインドを背負う事になりました。9月になんとか復学する事ができ、本格的な練習もやっと再開できるまでになりました。約2ヶ月間の全く走れないブランクがあり箱根駅伝本戦までの4ヶ月で100%の状態まで戻すのは困難と周囲は考えておりました。しかし、彼の地道な日々の努力により、復帰から約2ヶ月後には10000mで自己ベストを更新するなど彼の身体能力の高さと精神の強さに驚かさせれました。

中継所直前の嶋津選手

最後は渾身の力を振り絞り小田原中継所に飛び込み、2位に1分48秒という大差で5区”激坂王”の三上へ最高の形でタスキを繋いでくれました。

創大スポーツより

第5区:三上雄太(広島 遊学館)

嶋津の作ったアドバンテージにより気持ちに余裕を持ってスタートできた三上(3年)は、終始自分のペースを刻み山登りに挑みました。本人後談によると「終盤苦しい場面もあった」と言っていますが、後ろの運営管理車から見た様子は余裕すら感じさせ、始めて走る箱根路とは思えない堂々としたものを感じました。

淡々と登る三上選手

コースの登り最高到達点を無事通過し、本人が少し苦手としていた下りに差し掛かかりました。監督車から見ていても今ひとつスピードに乗れていない様子だったので「もっと体を前に倒し全体重を乗せるくらい突っ込め」とマイクで激を跳ばすと、動きを変えはじめスピードに乗り始めました。レース後三上は「下りに入って監督のアドバイスがなければ、区間2位のタイムで走れていなかったと思います。」と、監督車からの声かけで走りを切り替えるきっかけが掴めた事を喜んでいました。

そして、勢いそのままに大会史上19校目となる初の往路優勝という快挙を成し遂げ、箱根駅伝の初日を締めくくる事となりました。テレビ画面に映る彼のフィニッシュシーンはポーカーフェイスなのか涼しい顔をしておりましたね。

箱根までの地道なとりくみ

三上は前回大会では5区(山登り)の控え選手でした。走れなかった悔しさをバネにこの一年取り組んだ結果、記録的にも人間的にもチームで最も成長した選手となりました。夏合宿などでは山登り対策として上りや下りコースを使って、TT(タイムトライアル)を何度も実施してきましたが、特に上りのTTでは他の選手を全く寄せつけず"周囲を納得させる強さ"を見せていました。

“満を持して”挑んだ11月の『激坂最速王決定戦』ですが、たまたまネットニュースをいていた際にこの大会の事を知り、他大学との相関が分かればと思い挑戦させました。すると見事総合優勝を勝ち取り、当日他の引率業務をしていた私のところへ『優勝』の一報が入った時には本当に驚きました。間違いなくこのレースで”三上”は強い自信を獲得したと思います。

そんな三上は2021年の新体制からキャプテンに抜擢され、チームの牽引も背負って行くとこになりました。彼の強い心を持って臨めば必ず人も結果もついて来ると考えております。

創大スポーツより

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