箱根駅伝をもっと面白く見る
2021年も残すところわずかとなり”箱根駅伝2022“に向けカウントダウンが開始されました。予選通過をしている各大学は、12月10日に行われる16名の選手登録を前に往路優勝、復路優勝、強いては総合優勝をねらいつつ、身体のケアやコンディショニング、または心のケアと言ったところに注力をしている頃なのではないでしょうか? 選手や指導者は、ここに来るまでに沢山の時間を費やし想像以上の努力を行なって、今を迎えている事と思います。今回はこれまでにお会いした大学駅伝部監督の皆様からのヒアリング内容も踏まえ、創価大学駅伝部監督の榎木和貴氏に解説をもらいながら大学駅伝の『発掘▶︎スカウト▶︎育成』に着目し、チーム作りからチーム力アップまでの方法を少し掘り下げてみたいと思います。
発掘
《記者》監督、チーム力を上げる為の1番初めの取組は、まず”良い選手を探し出す”ことだと思いますが、日頃どうやって情報収集をしていますか?
《榎木監督》基本は日々全国の大会や記録会の開催情報を細かく調べてリストアップしています。各地域では競技力向上の為に地域の陸上競技協会の方々が伝統的に続けられている主要大会などがあるので、過去に自身が出場した経験なども活かして見に行くようにしています。その際に大学選手を出場させる事もあります。今は大会や競技団体のホームページなどで出場校や選手の名前、記録が公開されている事が多いので、そこを見てスカウトのプランを組む事もあります。
《記者》スカウトに行った際、どう言ったポイントを気をつけて選手を見ていますか?
《監督》良い選手の見極めには、タイムが良い選手、本番に強い選手、スピードがある選手、スタミナがある選手、など技術面の様々な見極めを行いますが中でも以下を特に気をつけています
- レース運び(積極性、駆け引き、粘り、ポジション取り)
- フォーム(腰高、足の返し、腕のふり、身体の傾き)
- 怪我(致命的なケガの有無、骨格、筋肉のつき方)
しかし、駅伝競走でのチーム力アップつながる選手発掘には、上記の技術面の見極めだけでは足りません。だから合わせて”精神面”も更に深く見るように心がけています。なかでも主なものは以下の三つです。
- 性格の素直さ
- 向上心の高さ(目標、目的を明確にしているか)
- 協調性(チーム、集団生活が問題なく送れるか)
《記者》上記3項目をどうやって読み取っているのですか?
《監督》下記のような感じです
①性格の素直さを見抜くポイント
- 監督やコーチの指示や戦略をしっかり”理解し”忠実に実践”できているか? 各高校指導者とお会いした際にお聞きしたり選手と直接会話するなども行なっています。
- あと、選手達が指導者の話しを聞く時の目線(相手の目をしっかり見れているか)なんかもみますね。
②向上心の高さは、何で判断?
- 目標が明確で、目標に向かって”具体的な”取り組みができているか?
- 現在の自分の課題とされていることに対して”どのような方法でアプローチ”しているか?
- 課題に対して何通りの取組に挑戦ができたか?
③協調性は選手の何で判断?
- チーム目標を共有できているか?
- 立てた目標が個人のみの目標になっていないか?
- 指導者への敬意とチームへの感謝の気持ちを持って競技ができているか?
《記者》昨今では、外国人選手のスカウトもチーム力アップの重要なポイントになっていますよね?
《監督》そうですね、基本はケニアに直接いって自分の目で選手を見てスカウトしますが、コロナ禍でなかなか実行できていないのが現状です。現地ではよくクロスカントリー大会やトラックレースが開催されていて、開催時期に合わせてそこに出る選手を見ます。外国人スカウトこそ”記録重視“のスカウトと思われるところですが、外国人選手も日本人学生と同様卒業後の進路も考えながら日本へ来るため、指導者としてはその辺りも踏まえ”性格や精神面“”家庭環境”なども見極めのポイントにしています。
《記者》年々来日外国人選手は増えていますが、来日後に記録を伸ばせる選手はそう多くはないですよね?
《監督》そうですね、逆に記録が伸びている選手は”ハングリーな心を持ち明るく素直な選手“が多いと思います。うちの大学のフィリップ選手が正しくそのようなタイプです。
スカウト
《記者》上記で良い選手の発掘ができたとしても、チームへうまく”スカウト”できるかどうか”勧誘”も重要なポイントになりますよね?
《監督》かなり難しいです。声を掛けてもなかなか思ったスカウト結果が100%でる事はないです。良い選手を育てる指導者とスカウト側との信頼関係もカギになると思います。選手を育てた高校指導者にとって、選手は我が子も同然で、我が子を伸ばせる将来の環境を常に探っていらっしゃいます。我々もその選手が、我々が提供する練習環境や指導方法に馴染むかも考えなが声かけをしているので、記録だけよくて勧誘すると言うわけにはいきません。
《記者》日頃から全国を隅々まで駆け巡り時には海を越えたり大変ですね
《監督》年間を通じてプライベートな時間はあまりないです。本当はゴルフなど趣味を満喫をしたり家族サービスをしたりもしたいところです。駅伝や陸上が本当に好きじゃないと、この仕事はやっていないですね。高校生指導者や選手との関係を築き上げるためには、じっくり時間をかけるしか無いと思ってますし、地味な活動ですね。
《監督》箱根駅伝2022をご覧になる際に、『この選手は、どのようなな流れて大学へ入ってきたのか?』なども探りながらご覧頂くと、より深みのある駅伝観戦になるのではないでしょうか?
育成
《記者》高校生選手スカウトがうまく行き大学へ入学してくれたとしても、そのまま記録を伸ばしてくれるとは限りませんよね? どんな育成を心がけているのですか?
《監督》スカウトの時に見極めた選手の”技術や性格”などの特性はあくまでベース(スタートライン)です。そこから沢山コミュニケーションを図り、伸び代を探しています。時には選手とさしでご飯を食べに行く事もあります。また、うちのチーム(創価大学)の場合は定期的に一人一人と面談を行っています。
《記者》面談ではどんな話をするのですか?
《監督》主に自身で立てた目標や計画の確認と必要な場合はその修正などです。選手自身がどうしたいのか?が重要だと考えていますが、学生にも色々なタイプがいるので、客観的な目線で現実にあった方向づけをしてあげるといった感じです。
《記者》練習環境についてですが、新しく選手寮が完成するとお聞きしましたが、その辺りも踏まえお聞かせください。
《監督》2022年春に創価大学駅伝部専用の寮が完成し、そこには今陸上長距離界で話題になっている”標高3000m”の環境で高地トレーニングを体験できる低酸素ルームや最先端トレーニングマシーンも導入される予定です。その他は下記の通りです。
- クロスカントリーコースのある、400mトラック
- 2022年に完成する駅伝部専用の選手寮
- 最新機材の揃うトレーニングルーム
- 低酸素ルーム
- 高酸素ルーム
- ファイテンルーム
- ストレッチやリラックスタイムを過ごせる中庭
- 管理栄養士による栄養指導
- 選手ごとのカルテ作成
- 外部トレーナーによる基礎トレーニング
- 経験豊富な指導スタッフ
- 選手を常にケアするマネージャー陣
- 大学から支給されるGARMINデバイスによるデータ管理
- 全国各地での強化合宿
と言ったところで、選手の可能性を最大限に引き出せる為のハードとソフトの両面をそろえています。
《記者》なかなか類を見ない環境ですね。これらは、監督の指示で導入されたのですか?
《監督》常に選手ファーストでありながら、選手に妥協を許させない環境づくりも大事だと考えます。長期的な目線での選手育成の為に大学にご理解を頂き、支援頂いて育成強化ができています。
《記者》最後に箱根駅伝に向けての豊富をお聞かせください。
《監督》チーム目標は、前回大会終了直後の新体制発足時に『3位以内』を掲げてスタートしました。そこは今も変わらず、選手達も11月頃から好タイムを続出し始め、夏場の強化の成果が出始めています。過去最高の選手層の厚さと言っていいです。箱根駅伝2022は上位数校のデッドヒートが予想されるくらい盛り上がるものと思われます。今回も無観客となりますが、是非テレビの前で熱い応援を宜しくお願い致します。
箱根駅伝お疲れ様でした!
私は駅伝は詳しくなかったのですが、創価大学が出場するようになり、毎年テレビに釘付けで見るようになりました。そのせいか、他大学の学生さんにも情が移り、毎年学生さん達からたくさんの勇気をいただいています。
こんな寒風の中、どうしてここまで走れるのか、限界に臨む学生さんに感嘆しています。と共に、自分にもまだまだやれる、無理だと思っていたことに向かい合っていこうと、勇気もらいました。
今、小学生の息子と来年のマラソン大会に向けて走っています。ついつい自分に甘くなりがちです。監督が言われるように、距離を走り込んだほうがいいのですよね。
これからも、ブログ楽しみにしています!
田中様 メッセージありがとうございます。
駅伝部専用の「新学生寮」素晴らしいですね。
学生のため、選手のためを考えての充実した最新の施設。
12月2日には、創立者が建設中の新学生寮を視察されたとのこと。
1月2,3日はテレビの前で、家族そろって力の限り応援します。
お一人お一人が、これまで積み重ねてこられた力を余すことなく発揮できるよう
日々祈っています。
それまで体調を崩しませんように。
齋藤様 箱根駅伝応援ありがとうございました