逃げ馬
戦国駅伝の復路は、創価大学駅伝部が2位に2分以上の差をつけてのスタートとなりました。誰もが2位駒沢大学以下の強豪校が7・8区あたりで挽回し先頭が入れ替わる事を予想しました。しかし、往路でダークホースとなった創価大学は逃げ続け、とうとう4区〜10区ラスト17km付近まで先頭譲る事なく走り続ける結果となりました。
名将達の戦略
創価大学-榎木監督
榎木監督は、選手達に上位もしくは先頭を走らせる事でそこから新たに生まれる高揚感で100%以上を出させるという選手心理をうまく利用して今回の結果に繋がっているようです。また、選出された選手を見てもそれに答えそうな性格を備えている様にみえますね。監督は前半から出し惜しみなく好記録を持つ選手を導入し、高揚感を得やすいシチュエーションを準備し、選手達も監督の策にうまくはまり、先頭を走る喜びを感じながら勇ましい表情で走っている姿が見受けられましたね。監督は自らが経験して来た『走る楽し』さをうまく今回のレースに取り込み選手達に同じ経験を味合わせる事が往路優勝総合2位という結果に繋がったのではないでしょうか。
駒沢大学-大八木監督
まさしく不屈の精神を持つ名将ですね。3分と言う差を23kmの距離で縮めるのは、誰もが不可能と予測していました。創価・駒沢の両選手達のハーフマラソンの持ちタイムからもそこまでの差はなかったので尚更でしたね。しかし、大八木監督は監督車からいっさい妥協のないアナウンスで選手を奮起させ勇気づけ、ラスト3キロで先頭を捕まえる事となりました。何が起こるかわからない『駅伝』の奥深さを知る名将ならではの戦略と言えるのではないでしょうか。
青山学院大学-原監督
往路で選手不調という苦い胆(きも)を嘗(な)めた原監督でしたが、往路終了時点からこの悔しさをバネに選手がありのままを出せる様に、チームを瞬時に立て直し復路優勝の総合4位まで漕ぎつけ定評通りの『強豪青学』を見せつけました。この背景には原監督の復路を走る選手達への声かけがあった事と思いますが、往路12位からの切羽詰まった状況で選手達の貫禄ある堂々とした走りは、なかなか成せる物ではない。原監督が一人一人にかけた『言葉』は誰もが気になるところで、いつか本に書いてくれる事を期待したいものです。
こうして、二日間217.1kmで行われた戦国駅伝は、コロナ禍で疲弊する日本に多くの感動を与えて終えることができたのではないでしょうか?弊社も箱根駅伝校への監督派遣という大役を頂き、この2年間箱根駅伝をいろんな角度から見る事が出来る様になりました。2021は特に、今までテレビで見てきた華やかな箱根駅伝とは違い、選手達の苦行と名将(監督)達の何度も何度も立て直される奥深い戦略の上にある事を再認識させられ、まさしく『臥薪嘗胆』という言葉がマッチした箱根駅伝でした。この言葉、の裏には、『永久的に王座に君臨する事は無い常に努力をしなさい』という意味も込められています。来年はさらに今年苦湯を飲んだ名門各校が、高みを目指すだろうし、上位3校もそれに負けじと新たな策を講じるでしょう。どんな臥薪嘗胆が見られるのか、楽しみでなりませんね。
臥薪嘗胆
「臥薪」は、固い薪の上で寝ること。「嘗胆」は、苦い胆なめること。仇を討つために労苦を自身に課して、機が至るまで苦労を重ねる意。
〈故事〉
中国春秋時代、呉王夫差は、父の仇である越王勾践を討つために、薪の上に寝て復讐心をかきたて、のちに勾践を破った。また、会稽山で夫差に敗れた勾践は、その恥を忘れないために苦い肝をなめて、のちに夫差を滅ぼした。
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